第4回Zoom懇談会開催

  • 開催日:2021年4月3日(土) 10:00より約1時間
  • 会員参加者:16名
  1. 初参加者の自己紹介
  2. 当会の大蔵八郎監事より「司馬遼太郎の『彰義隊胸算用』の批評」のテーマで講演を頂いた。  

司馬氏は短編「彰義隊胸算用」で彰義隊幹部(8番隊副頭取)寺沢正明を主人公に据え、この寺沢を凡庸、彰義隊は狂騒と捉え、ともに史実を追うことなく否定的に描いている。例えば上野戦争の1週間前の薩摩兵との乱闘事件では、薩摩藩から彰義隊士を貶める虚偽の届出が正式な明治政府の記録となっており司馬氏はこれを無批判にこの作品に用いている。彰義隊内部の天野派と渋沢派の抗争も単なる思想的な路線対立に過ぎないのに司馬氏は金銭的欲得の対立にすり替え歪めて描いている。薩長官軍史観に安易に立脚した小品で講談と見做せばいいのだが、ある程度の時代考証を尽くしているので歴史と間違われやすい。『新彰義隊戦史』出版に込めた願いは彰義隊士の慰霊追悼であり、その最短手段は隊士達の思想と行動を正しく伝える事。これに反する作品を公表した司馬氏には一言無かるべからずだった。